「食後すぐに歯を磨くと、歯みがきのつもりが歯を削ってしまうことになる・・・。」

けっこう衝撃的なことを言っていますが、真意はこうです。

「食後20〜30分は口の中が酸性になっていて歯の表面が削れやすくなっているので、歯を磨くなら食後30分以降にしましょう。」

 

つまり、食後の歯みがきがいけないわけではなくて、食事の後「すぐに」磨くのがいけないということです。

もう少し詳しく説明していきますね。

食事をすると歯の表面のpHが急激に下がる(=酸性になる)

次の図は、歯の表面についた歯垢の中のpHが、時間とともにどう変化するかを示したグラフです(ステファンカーブと呼ばれます)。

簡略化したステファンカーブ。歯の表面についた歯垢の中のpHは、食事をすると急激に下がり始め、食後3〜5分で歯の脱灰(だっかい)が起こる。その後pHは徐々に戻り始め、食後20〜30分で歯の再石灰化が起こるようになる。黒沢・幕内(2017)より一部改変して引用。

 

図を見てもらうとわかる通り、歯の表面のpHは食後すぐに下がり、一気に酸性に傾きます(だいたい食後3〜5分)。

酸性の条件では歯の主成分であるハイドロキシアパタイトが溶解するので、食後すぐの時間は歯の表面が微妙に溶け出している状態になっているのです。

歯の成分が溶け出すことを「脱灰(だっかい)」と言いますが、この時に歯みがきをすると、歯の表面はダメージを受けます。

物理的な刺激が溶解を促進するからです。

食後30分以降は再びpHが中性付近に戻る

先ほどのステファンカーブをもう一度見てください。

食事の後に急激に下がったpHは、その後徐々に回復し、食後20〜30分ほどで「脱灰」が終わります

そして、その後は歯の「再石灰化」が起こるようになります。

 

歯の表面のpHが低いか高いかによって「脱灰」するか「再石灰化」するかが決まるのですが、その境目(=臨界pH)は、だいたいpH5.5〜5.7と言われています。

pHが5.7よりも高くなって再石灰化するようになった歯の表面は、脱灰していた時に比べて頑丈です。

この時に歯みがきをすれば何の問題もないわけですね。

再石灰化は、次に食事をするまでずっと続きます。

脱灰が優勢になっている時間には歯を磨かないこと

というわけで、食事直後の脱灰が起こっている時に歯を磨いてはいけません

「食べたらすぐに歯みがきをする」というこれまでの常識は、科学的には間違いです。

 

もしかしたら、次のようなことに心当たりはありませんか?

  • 小さい子どもに、食事の後すぐに歯を磨かせる。
  • 「甘いものを食べたから歯を磨かなくちゃ」と言って、間食の後すぐに歯みがきをする。
  • 仕事のお昼休みに洗面所で急いで歯みがきをし、午後の仕事を始める。

これらはやってはいけません。

3番目はビジネスマンに多いですよね。

まとめ

以上、「食後すぐに歯を磨く」が間違っている理由を、歯の表面のpHの変化からご説明してきました。

食後30分は歯を磨かないようにして、歯みがきによって歯の「脱灰」を促進しないようにしましょう

歯みがき自体は良いことです。

ぜひ「脱灰」と「再石灰化」の違いを意識して、より効果的な歯みがきを習慣にしてください。

引用文献

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